Stardust Hearts
- Open one story of little world in the big city.
- She looks up sky, Very mad sky.
- She looks down her heart, Very little heart.
- She remenber sin of crimson.
- She spit on the fuckin' bastards.
- After noise open a noise.
- あとがき
Open one story of little world in the big city.
スラム。
かつては華やかだったその街並みも、人が失せてしまえば簡単に変貌する。
昔は立派だったであろう建築物の壁面には無数の罅割れが生じ、今にも崩れ落ちそうな外観をしている。
決して陽光が差さないわけではない。だが、スラムの空気は重く、暗いものだった。
それでもこの捨てられ、忘れ去られた小さな世界には多くの人間が暮らしている。
似たような、老朽化の進んだ建築物の波の中にある、まだ小奇麗な建物。昔はホテルとして存在していたその建物の一室。
ピリリリリリリリリリリリ・・・
さほど広くも無いその部屋に電子音が鳴り響く。
ピリリリリリリリリリリリ・・・
「ん〜・・・」
呻き声と共に、シーツが波を立てる。そのシーツの中から、テーブルの上に置いてある携帯電話に向かい、手が伸びていく。が、あと僅かの所で届かない。
ピリリリリリリリリリリリ・・・
その間にも、携帯電話からは電子音が絶えず鳴り響いていた。
「あーもう!」
シーツを放り投げ、少女がベッドから身を起こす。
ピッ・・・
「もしもし?」
眠そうな、そして不快感の混じった声で応答する。
『・・・寝てたか?』
電話の向こうから男性の声が響く。もうすっかり馴染みの声だ。
「べつにぃ・・・」
そう言いつつ、欠伸を飲み込む。
「で? 何? 仕事?」
そう言ってから、問う必要も無いと気付く。仕事以外で彼から電話が来たことは一度も無いからだ。
『あぁ、詳しいことはこっちに来てからだ』
「はいはい」
投げやりに返事を返す。
『・・・店の場所は覚えてるだろ?』
彼の不信そうな声が聞こえてくる。
「馬鹿にしてる? アダムズ通りの三番交差点を右に曲がって・・・」
『違う・・・』
彼の呆れた声と、ため息が響く。
「・・・あれ・・・?」
『店の場所が変わったって言っただろ?』
「・・・・・・」
そういえば、地図をもらった記憶がある。
『・・・まさか、地図も無くしたのか?』
彼のその言葉が、グサリと胸に突き刺さる。
「いや、あるよ! うん、ある!」
慌てて鏡台の引出しを調べようと、左腕を伸ばす。が――
「あ・・・」
左腕は、肩と肘の中ほどの所で途切れていた。
電話を頭と左肩で挟み、右腕で引出しの中を漁る。程なく、紙切れ―― 一枚のメモ用紙を見つけた。その紙面には、手書きの地図が描かれていた。
『見つかったか?』
「あぁ、うん」
少女は、そのクシャクシャになったメモ用紙を鏡台の上に置いた。すぐ目に付くように。
『一時までには来てくれ』
そう言って、彼は電話を切った。少女の返答も聞かずに。
「あいさ」
すでに切れた電話に向かい、少女は応える。
She looks up sky, Very mad sky.
アリア=シルベストリー
年齢 十四歳
身長 一二八p
体重 二十九s
体型 ほぼ寸胴
座右の銘 賢明懸命
目標 身長を伸ばすこと
それが、少女の持つ個人情報だった。他には何も無い。住所も、両親も。だが、それでも彼女は十分だと感じていた。
現在、この時間が流れているだけで、それだけで十分だと感じている。決して、幸せだとは言えないが。
とにかく、今は何よりも自分が陥っているこの状況を打破することが最優先だ。
「むむっ?」
アリアは路地から顔を覗かせ、通りの様子を伺う。
「むむむっ?」
何度も何度も、首を左右に回す。ちなみに今の時刻は一時三十分。コールマンとの約束は一時きっかりであり・・・すなわち、完全な遅刻である。
「むぅぅ・・・」
頭を掻き、手に持った地図を見る。
クシャクシャの地図。所々消えかけた地図。正直、何の役にも立ちそうにない。というか、立たないことは確認済みだ。
「あっれぇー?」
たしか、一度行ったことがあったはずだ。どうにかしてその時の道のりを思い出そうとするが、なかなか思い出せない。それでも、頭を抱えて思い出そうとする。が、結局は無駄なことだった。
そして顔を上げ、別段困り果てた様子もなく、フラフラと通りを歩く。
「おい」
不意に、横から声を掛けられた。と、思った瞬間――
「ぅわぁっ!」
ブラウスの襟を掴まれ、振り回される。
バランスを崩して倒れそうになる。が、なんとか踏みとどまった。
顔を上げると、そこには青年が一人、立っていた。
「・・・コールマン・・・」
アリアは、彼の名を呟く。
黒い髪に黒い瞳。それは東洋人の特徴だった。
「どこにいるかと思えば・・・」
コールマンはアリアを見下ろし、ため息をつく。
彼は背が高い。東洋人だというのに一九〇p以上の身長があるのだ。だから、アリアは自然と彼から見下ろされる形になる。彼女にとってそれが悩みだった。
彼の高い背が、その黒い瞳が、彼女に威圧感を与える。だが、それでもアリアは密かに、コールマンに恋焦がれていた。
「いやぁ・・・ゴメンゴメン・・・ハハハ・・・」
適当に笑って誤魔化す。そんなことで彼の顔から不機嫌が消えることは無いが。
「お前はどうしてそんなに記憶力が悪いんだ?」
真顔で問う。完全に呆れかえっているということだ。彼の期待に沿えないことが、アリアにとって何よりも苦痛だった。
「うぅ・・・ゴメンなさい・・・」
深く頭を下げる。外から見ても、かなり落ち込んでいるのがよく分かる。それでも、コールマンは慰めの言葉も掛けない。
「とにかく、仕事の話だ」
そう言うと、コールマンは自分の背後の建物に入っていく。
「あ・・・」
そこが彼の店だった。
自分が心底馬鹿だとようやく気がついた。
結果がこうならば、誰だって呆れるだろう。
She looks down her heart, Very little heart.
コールマンの店は、スラム街にあるということを除けばいたって普通の店だった。何の変哲もない、ただのバーだ。
人気が無いのは、今が昼間だからだ。この店は夜にならないと開店しない。夜ともなれば、大いに賑わいを見せる。
そんな店も、人の居ない昼間は殺伐としたものだ。
「で、仕事って何?」
カウンター席に座り、ミルクを飲む。無駄な努力と言われようが、ミルクを飲む。いつの間にか、いつも通りになってしまった習慣。
その習慣を消化しながら、仕事の内容を問う。
「掃除しろ」
仕事の話と聞いて少しだけ、ほんの少しだけ期待していたのに、その期待は裏切られてしまった。
「・・・またですか?」
つまり、店の準備をして、尚且つウェイトレスをやれと言うことだ。最近の仕事はそればかりで、アリアにとっては仕事中にトランスしてしまうほど退屈な仕事だった。
本来のアリアの仕事は店の準備でもウェイトレスでもない。傭兵だ。
傭兵というより、何でも屋に近い。
アリアはこれまでに、子守りから麻薬密売組織の壊滅援助まで、幅広い仕事を手掛けてきた。そんな彼女が、ここ一、二週間ほどはずっと、ウェイトレスだ。
「たまにはマトモな仕事がしたいぃ〜!」
カウンターを両手で叩く。激しく叩く。何度も叩く。
それでも、コールマンは大した反応を見せない。煙草を咥え、新聞紙面に視線を走らせる。
「六割」
煙草を咥えたまま、コールマンは一言呟いた。
「は?」
アリアにはその単語の意味が分からない。何が六割なのか。
「・・・お前の仕事の失敗率だ」
「・・・・・・」
口を半開きにしたまま、アリアは硬直する。
「しかも、その内の八割がターゲットを殺してな」
アリアが気まずそうに俯く。
「そんな奴に仕事を回せるか」
最もな意見だ。
たしかに、考えてみれば沢山殺した気がする。こんな結果ならウェイトレスに回されて当然だろう。それでも、アリアは府に落ちないが。
「まぁ、俺の出す条件を飲むっていうなら、考えなくもない」
「条件?」
珍しいこともあるものだ。いつもならこんなことは無い。まぁ、二週間も同じ仕事をさせられたのは今回が初めてなのだが。
「夜羽音と組め」
「嫌だ!」
コールマンの言葉に即答する。それだけは何としても、何があっても断らなければならない。
「なら、一生ウェイトレスだ」
「ぐっ・・・」
握りしめた手がブルブルと振るえる。ウェイトレスなんて退屈な仕事はしたくない。だからといって、夜羽音と組むのは危険すぎる。
「・・・こ、今後は気を付けます。気を付けますから何とか・・・」
手を合わせて嘆願する。それでも、コールマンは承知しない。容赦しない。
「駄目だ。組め」
「そ、そこを何とか〜っ!」
カウンターに額をついて嘆願する。それでも、コールマンは全く容赦しない。
「駄目だ。組め」
「うぅっ・・・そんなのって・・・」
言いかけた言葉を飲み込む。
体に、微かな振動を感じる。地震ではない。空気を振るわせる重低音。
これは、人工物。バイクによるものだ。そして考え得るに、排気量一三〇〇tを誇るであろうそのバイクでこの場所に来る人間など、一人しか居ない。
「ど、どどどどどどどどうしよう!」
突然、アリアが慌てふためく。慌てふためきどこかに隠れようとするが、この店内に隠れる場所など無い。テーブルの下なんてたかが知れてる。唯一、カウンターに隠れることは出来るが、コールマンがそれを許さないだろう。
「どどどどどどどど、どうしよう! ど、どうすれば・・・!」
コールマンは素っ気無い態度で新聞を読みつづける。
やがて、バイクの持ち主の足音が聞こえてくる。ブーツが地面を叩く音、そして、木製の床を叩く音・・・徐々に、徐々に近づいてくる。
そして、ついに店のドアノブが回される。
「く、来る・・・夜羽音が来る!」
カランカラン――
心地よい鈴の音とともに、店内に入ってくる人影。
「たっだいまぁ!」
その人影が、明るい声で挨拶をする。
声の主は十七、八歳くらいの少女だった。肩口で切りそろえられた髪の隙間から、尻尾のように束ねられた二房の長いテールヘア。それが、彼女、夜羽音のトレードマークである。
初めて彼女に出会ったときは、心底憧れたものである。スタイルは抜群で、器量も良し。何より、その強さ。アリアにとって夜羽音の全てが憧れだった。
今では、ただの『天敵』だが。
その『天敵』夜羽音が、アリアの姿を見てとる。夜羽音と目を合わせないように背を向けているが、それはアリアであることは容易にわかる。開店していない今の時間に客が来るはずも無いし、なによりポニーテールを束ねるために必要以上のリボンを付けるのは、世界中探してもアリアしかいまい。
「あ・・・」
夜羽音の口から、呟きが漏れる。
「アリアちゃ〜ん!」
次の瞬間には歓喜の声に変わっていた。
猛ダッシュでアリアに迫り、逃げ出そうとする彼女を抱きかかえる。
アリアは懸命に逃げようとするが、体格が、身体能力が違うため、引き剥がすことが出来ない。
「会いたかったよ〜」
アリアを抱きしめ、頬擦りをする。
「ちょ、やめっ・・・夜羽音っ!」
アリアは必死に抵抗する。抵抗するが、全く効果はない。
「こ、コールマンっ・・・助けてっ・・・」
必死にコールマンへと腕を伸ばす。が、夜羽音によってその腕は拘束されてしまった。
「だめぇ・・・二人の世界には何人も入り込めないんだよぉ」
夜羽音がラヴラヴ口調でアリアに言葉を投げかける。その甘い吐息を掛けられたアリアは激しく身震いする。
「夜羽音っ! 離せっ!」
必死に、夜羽音を引き剥がす。
「仲が良いもんだな」
二人の様子を見て、コールマンが笑いながら呟く。その言葉に、アリアは猛反発する。
「どこから見たらそんなこと言えんの! こちとら身体狙われてんだから!」
ようやく夜羽音と距離を取ることができたアリアが、半ば叫んでいるような口調で全てを否定する。その間も、夜羽音はアリアの腰に手を回し、身体を密着させようとする。が、顔面をアリアの拳骨で押さえつけられているため、密着できない。
「あ、アリアちゃん・・・ゲンコは痛いんだけど・・・」
「うっさい! 近寄るな! っていうか手ぇ放せ!」
アリアに怒鳴られた夜羽音が渋々手を放す。
「まぁ、それだけ仲が良けりゃ仕事も捗るだろ」
「ちょ、コールマン!」
二人の言動が理解できない夜羽音は首を傾げる。
「アリアがまともな仕事したいって言うもんだから、今度からはお前と・・・」
「だぁぁぁあめぇぇ!」
コールマンの言葉を遮るために大声を張り上げたが、夜羽音は既に全てを理解していた。
「オッケー! そんじゃ、これからヨロシクね。アリアちゃん♪」
「いぃやあぁぁぁぁ!」
アリアの悲鳴が店内にこだまする。それでも夜羽音は嬉しそうに、コールマンは淡々としている。
「大体、責任は全てお前にあるんだ。まともに仕事の一つもこなせないクセに仕事をよこせだと? ふざけるのもいい加減にしろ。お前たった一人のおかげで俺の所に寄せられる仕事は減ってるんだ。これ以上減らされたらたまったもんじゃない。それなのにお前は自分に関係ないと思って・・・」
コールマンの長い説教。夜羽音はその説教に耳を傾け、頷く。アリアといえば、身を縮めて俯いている。その身体が、僅かに震えている。
「うわああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁん」
突然、アリアが発狂し、叫び声を上げる。これにはさすがの夜羽音も、不動明王コールマンも驚愕した。
「家出してやるぅー!」
捨て台詞を残し、アリアは店の外へと走り去る。
店内に、静寂が訪れる。
「・・・あーあ、言い過ぎたかな?」
夜羽音がカウンターに頬杖をつき、コールマンを見る。彼の反応はいたって冷静だ。
「俺は当たり前のことを言っただけだ」
その素っ気無い台詞に、夜羽音がクスッと笑う。
「それもそうだね。それに、どうせ戻ってくるよ。子供の家出なんてそんなもんだし」
と、そう言った瞬間。店のドアが開けられる。
そこに立っていたのは、アリアだった。
「早っ!」
夜羽音が驚く。アリアの持つ家出帰還記録を大幅に塗り替える新記録がここに生まれた。
「い、いや・・・別に帰ってきたわけじゃないよ。ただ・・・女の子が・・・」
とりあえず、帰還したわけでないことを説明するが、その後はあやふやだ。
「あ?」
コールマンの不快感そうな、素っ気もクソもない返事にアリアは焦る。
「え、だから・・・あぁ、もう!」
そう言ってドアを閉める。と思ったら、またスグにドアが開かれる。今度そこに立っていたのは、やはりアリアだった。が、その背中に女の子を背負っていた。
アリアよりも少し幼げな女の子だ。
「なるほど、女の子ってそういうことね」
夜羽音が頷く。
「で、ほっとく訳にも行かないでしょ」
アリアが女の子を背負い、店の奥へと向かう。
店の奥は居住スペースになっている。割と部屋数も多く、部屋自体もそこそこ広い。が、今現在このスペースを使っているのはコールマンと夜羽音だけだ。昔はアリアも使っていたが、夜羽音の夜這いを恐れて一人暮らしをしていた。
「とりあえず、夜羽音の部屋に入れておいてくれ。俺は他の使えそうな部屋を整理してくる」
She remember sin of crimson
結局あの少女は何者なのか、全く分からないまま時間だけが過ぎていた。表街で誘拐されただの、行方不明だの、そんな話はここ最近聞いたことが無かった。
「で、あの子の様子は?」
アリアはミルクを飲みつつ、夜羽音に問う。
「大した怪我もないし・・・多分、大丈夫だと思うよ」
「そっか・・・」
いつになくナーバスなアリアを見て、夜羽音は元気付けようとアリアを茶化す。
「いやぁ、アリアちゃんも案外いいトコあるねぇ」
「別に・・・そんなこと無いよ」
そう言って、ミルクを一気に飲み干す。
「ちょっと、散歩してくる」
そのまま、店の外へと消えていく。
再び、店の中は夜羽音とコールマンの二人だけになった。
夜羽音はふぅっ、と小さく息を吐き、柔和な笑みを浮かべる。
「・・・繊細だねぇ」
コールマンはその言葉に頷くこともせず、新聞を読みつづける。
「あの子見て、昔の自分思い出しちゃったのかな・・・」
再び夜羽音の口から漏れた言葉にも、コールマンは何の反応も見せない。
「あたし、アリアの様子見てくるよ」
何の反応も見せないコールマンにそう言い残し、夜羽音は店を後にする。
店内には、コールマン一人だけとなった。それでも、コールマンは黙々と新聞を読みつづける。
カタン――
不意に、背後から物音がした。
何の動きも見せなかったコールマンが、その首を動かす。その視線の先には、先ほどの女の子がいた。ドアに半分だけ、身体を隠し、こちらの様子をうかがっているようだ。
コールマンは新聞紙を軽くたたみ、首を回す。
「腹でも減ったか?」
女の子が少し、奥に引っ込む。
「そう警戒するな、腹が減ったなら何か作ってやろうか?」
女の子は、微動だにしない。が、女の子の警戒が緩んだように見えた。
その女の子に向かって、コールマンは滅多に見せない笑みを浮かべる。
「何か食いたいもんがあるんだったら、カウンターの前に向かって注文しろ」
その言葉に、女の子は笑みを浮かべ、大きく頷く。
そして、カウンターに座った女の子が注文したものは―――
自分は、汚れている。穢れている。
そう思えてならない。
スラムの小さな路地裏で、アリアは膝を抱えて蹲っていた。
あの、自分が助けた女の子を見て、昔の自分と重ね合わせた。
夜羽音と出会う前の自分。
コールマンと出会う前の自分。
スラムを彷徨っていた頃の自分。
そして、連鎖的に思い出される、もっと昔の自分。
父と、母を・・・たとえ直接ではなくとも、殺してしまった自分。
過去は、消去することが出来ない。
過去に罪を犯した者は、永遠に、罪とともに生き続けなければならない。
アリアは膝を抱え、頭を埋め、必死に、壊れてしまった小さな箱を直そうとする。だが、壊れた小さな箱は、思うほど簡単に直すことが出来ない。
過去は、消去することが出来ない。
だから、その小さな箱に封じてきた。
過去に罪を犯した者は、永遠に、罪とともに生き続けなければならない。
だから、その小さな箱の上に、新たな記憶を、積み上げていく。
それでもその箱には、簡単に触れることが出来てしまった。
そっと、自分の顔に手を添える。左眼の下。まだ癒えない、傷。
負の念が篭った傷は、消えにくいと聞いたことがあった。それはやはり、罪負い人への呪いだからだろうか。
指先で、触れた傷口をそっとなぞる。
痛くはない。痛いはずはない。傷は残っているものの、完治しているから痛みなど感じることはない。
だが今は――今だけは、痛みを感じることが出来た。小さな箱が壊れた今だけは―――
思い出したくないのに、どうしても思い出してしまう。
紅い記憶。
呪われた、紅い記憶。
目の前で、紅い雫が弾ける。
「・・・ゃ・・・」
父の左腕が宙を舞う。
「・・・ぃ・・・や・・・」
母の細い首筋に、鈍色の凶刃が深深と突き刺さる。
「いやぁああぁぁぁああぁぁぁ! もうやめてよぉおおぉぉおおおぉぉ!」
頭を抱え、ありったけの声で叫ぶ。無駄なことだとは分かっている。呼びかけても無駄だと分かっている。記憶を掘り出しているのは自分だから。
「もぉ・・・やめてぇ・・・」
泣きじゃくりながら、必死にその記憶を封じ込めようとする。だがいくら封じ込めても、壊れた箱の隙間から漏れ出してくる。
「助けて・・・」
嘆願。
誰にでもいい、ただ助けて欲しかった。なら何故、店を出てきてしまったのだろう。あの店にいれば、あの二人はきっと、自分を助けてくれただろうに。
「助けて・・・誰か助けて・・・」
周りに誰も居ない事を承知で呟く。
その時、あの振動を身体に感じた。
いつもは畏怖を与えてくるその振動に、今は安堵することが出来た。
「夜羽音・・・」
その少女の名を呟く。
夜羽音がもうすぐここに来る。
泣いている自分は見せたくない。もう、見せないと誓った。
袖で、涙を拭う。深呼吸して、心を落ち着ける。
気が付いてみれば、先ほどまで感じていた心の闇も、いくらか晴れたようだ。
夜羽音のことを、コールマンのことを思い浮かべ、深呼吸を繰り返す。
やがて、強く感じていた振動が消えうせる。その代わりに聞こえてくる、ブーツが石畳を叩く音。
アリアは顔を上げた。視界に、夜羽音の姿が映る。
「気分は晴れた?」
そう言って、夜羽音が差し出したのはミルクだった。アリアは小さく笑い、その瓶を受け取る。
「うん、ありがと」
夜羽音はアリアの隣に座り、缶コーヒーを飲む。
「アリアちゃんはさ、自分ひとりで何でもかんでも抱え込んじゃうんだよ」
夜羽音のその言葉が、痛いほどに優しかった。
「たまには、あたし達にぶつけてよ。そういう考えはさ。あたしも、コールマンも・・・アリアちゃんが元気ないと、凄く心配だからさ」
そう言って、アリアの肩を優しく抱き寄せる。
いつものように、不快な気分にはならない。額にキスをされても、全く不快にはならない。それはやはり、夜羽音が心底、自分を心配してくれているからだろう。
いつもこれだけ優しかったらなぁ――
不意に、そう考えた。
馬鹿なことを考えたと思う。夜羽音の優しさを無下にするような考え。だけど、そんな考えをすることでまた、闇が少し晴れたような気がした。
「そんじゃ、そろそろ戻ろっか」
「うん、そだね」
一気にミルクを飲み干し、夜羽音と一緒に歩き出す。
こうしていると、なんだか夜羽音が母親のようにも感じてしまう。
年齢なんて、それほど変わらないのに。
She spit on the fuckin' bastards
夜羽音はなんであんなバイクに乗っているのだろう。実際、あのバイクに乗ってみると、いつも感じていた以上の振動が内臓を揺るがし、実に不快だった。
それでも、文句をいくことなく乗ってきたが。
「・・・アリアちゃん、何か顔色悪いけど・・・ダイジョブ?」
「あ・・・うん」
やはり、途中で降ろしてもらえば良かったかもしれない。
深呼吸を一つして、調子を整える。完全に整えることは出来なかったが、それでもいくらかは楽になった。
店のドアの前に立ち、もう一度深呼吸をする。
「ちぃ〜っす」
軽い挨拶をして、ドアを開ける。
ドアの向こう側は、店の中は整然としていた。
「・・・あれ?」
「どしたの?」
背後から夜羽音が店内を覗き込む。
「コールマン・・・出かけたの?」
「え? そんなハズはないっしょ・・・」
そう言って、夜羽音も店内に入る。が、やはりコールマンの姿はない。
「あー、あの子の様子でも見てるのかな・・・」
二人は店の奥へと向かって行く。
カウンターに近づいたとき、アリアの足が止まった。
「・・・どしたの?」
「・・・血・・・血の匂い・・・」
アリアが、カウンターの向こうへと回り込む。
血の匂いは、そこから発せられていた。
「コールマン!」
声を張り上げ、床に倒れこむ青年へと駆け寄る。続いて、夜羽音も駆け寄ってくる。
抱き起こそうとしたアリアを、夜羽音は制止する。
「待って、傷が酷すぎる・・・ヘタに動かすと余計に血が吹き出るかも・・・」
そして手際よく、脈、呼吸を確認し、テーブルクロスを引きちぎり、止血処置を施す。
「脈も呼吸もある・・・意識は・・・」
言いかけたとき、コールマンの瞼が僅かに開いた。
「・・・夜羽音・・・」
「コールマン・・・無理に喋ったりしないで・・・」
だが、コールマンは視線をアリアに移し、上体を起こそうとする。当然の如く、血が溢れ出る。
「コールマン! 動いちゃダメ!」
アリアも、夜羽音と共に、コールマンを制止する。
「アリア・・・狙いはお前だ・・・気をつけろ・・・まだ、近くに居る・・・」
言葉を話すという行為が、コールマンの身体に激痛を走らせる。それでも、激痛に耐えようと、歯を食いしばる。
「コールマン・・・もういいから!」
そう言って、夜羽音は必死にコールマンを制止する。
「夜羽音・・・」
アリアが、立ち上がる。
「あたし、行ってくる」
足早に、店の外へとでる。
夜羽音は何も言わず、その背中を見送った。
店の外は、何の変わりも無い風景だった。
スラムに似つかわしくない広い通り。だが、歩く人が居なければ、何の意味も無い、ただの広い通り。
石畳を、踏みしめる。冷たい空気を、頬に感じる。
「そんなに怖い顔して、どうしたの?」
不意に、声が掛けられる。
声の主は、女の子だった。自分よりも僅かに小さな女の子。
アリアはその女の子を知っていた。知らないわけが無かった。自分が助けた女の子だったから。いや、『助けた』という単語は、何の意味も無い。結果的に、敵として相対している。
その敵の罠に、自分はまんまと嵌ったわけだ。
「どうして、私を狙った?」
女の子に対して、問い掛ける。
「偶然。偶然って、怖いことだと思わない?」
女の子は、およそアリアの問いに遠い応えを返す。
「アナタはこれまで、何人の人間を殺してきたの? まぁ、私には興味ないけど。偶然は、そこに生まれた」
やれやれと言った感じで両手を軽く上げ、溜息をつく。
「アナタがこれまで殺してきた人間は・・・まぁ、全てじゃないけど、ある『組織』に所属する人間だった。その『組織』は政治にすら干渉できるほどの権力を持った組織なのよ。で、私はその『組織』に雇われている、いわゆる『殺し屋』ってやつ。今回の目標はアナタってわけよ」
女の子の話を聞きながら、アリアは硬く拳を握り締めた。
「だったら・・・だったら何であたしだけを狙わない! どうしてコールマンを殺そうとした!」
ありったけの怒りを、女の子にぶつける。
「邪魔だったから」
女の子は、躊躇することなくそう言った。
「アナタを殺す上で、障害になりそうだったから。でも、まだ生きてるみたいね・・・まぁ、いいわ。アナタを殺した後、確実に息の根を止めるから。もちろん、もう一人もね」
女の子が言い終わると同時に、アリアは地面を蹴る。
一気に差を縮め、懐に飛び込む。と同時に腰を落とし、地面スレスレを薙ぎ払う水面蹴り。
女の子は、軽く飛び上がり、アリアの蹴りをかわす。
だが、アリアの狙いはそこだった。
蹴り足を一気に引き戻し、反対の足で女の子を、後ろ向きで蹴り上げる。
一瞬の内に行われた軸足の転換に、飛び上がった相手はついていく事ができず、顔面に蹴りを受ける。
アリアは蹴りの勢いで状態を起こし、女の子は空中で身を翻し、再び対峙した。
「・・・なかなかヤルじゃない・・・」
血の混じった唾を吐く。
女の子の言葉を聞いたアリアが、小さく笑う。
「なかなか・・・ねぇ。普通は水面蹴りされて、真上に飛び上がったりはしないけどね」
女の子の顔が、僅かに歪んだ。
「実は、実戦なんて殆ど経験したこと無いんじゃないの? まぁ、所詮コドモよね」
『子供』という単語に、女の子は逆上する。
「子供だと・・・? 舐めるなぁあああぁああぁああぁぁ!」
雄叫びを上げ、腕を振るう。次の瞬間、女の子の手にはナイフが握られていた。
切断を目的としたナイフではない。投擲用の、小型のナイフ。
「あぁ・・・それで接近戦は苦手なわけだ。で? 投げたら戻ってこないナイフでどうやって勝つっての?」
「・・・勝手に、吼えてろおおおぉぉおおぉぉぉぉぉ!」
大きく、腕を振る。片手から三本ずつ。計六本のナイフがアリアへ向かい、まっすぐに空気を切り裂いていく。
それらのナイフを、簡単な横移動だけで避けていく。
刃物が飛んでくることは確かに恐怖かもしれない。だが、避けることが出来ないわけではない。むしろ、一直線にしか飛んでこないわけだから恐れる必要はない。
「投擲の腕は確かみたいだけど。ナイフが無くなったらどうするの?」
アリアのその問いに、女の子は歪んだ笑みを浮かべて応える。
「私のナイフに、終わりはないの」
「はぁ? 何? 身体の中で作ってるの? 面白い・・・」
言葉を言い終わる前に、アリアは横に飛び跳ねる。
女の子がナイフを放ったわけではない。逆、つまり後ろからナイフが飛んできたのだ。
とっさに後ろを振り返る。
だが、自分の後ろに人は立っていない。他の誰かが投げた、と言うことではない。
アリアは視線を戻し、目を見開いた。
歪んだ笑みを浮かべた女の子の目の前に、六本のナイフが浮いていた。
空を漂うわけでもなく、ただ静止していた。
歪んでいた笑みが、さらに歪んだ。
「どう? 驚いたでしょ? これが私の持つ『能力』なの・・・おかげでこんな姿のままで生きるしかない運命だけど・・・不便に思ったことはないわ。簡単に人を殺せて、とても充実してて、なによりも楽しいから」
深呼吸を一つして、アリアは立ち上がった。
「サイコキネシス・・・いや、テレキネシスだったかな? ただの空想だと思ってたよ」
そして、大きな溜息をつく。
「でも、そんなのに頼ってちゃぁね・・・所詮ガキってことね」
笑みを浮かべていた女の子の顔から笑みが消える。歯を食いしばり、拳を硬く握る。全身が震えるほど、力が篭っていた。
「・・・ガキだと・・・? ガキって言ったのかぁあああぁあぁ!」
小さく、溜息をつく。
「一回で聞き取れないなんて・・・恥ずかしいくらいガキね・・・」
「あ、あああぁぁああぁぁあああぁあぁぅぅううぃいいいいぃぃぃぃぃいいいいぃい!」
女の子は頭を抱え込み、大声で奇声を発する。
顔をあげ、コートを開く。
コートの中には、夥しい数の投擲用ナイフが仕込まれていた。
「テメェは! そこで、ボロ雑巾みたくなって死んでろおぉぉおおぉぉおおぉおおお!」
コートの中のナイフを取り出し、投げつける。
横に飛び、軌道の軸を逸らす。
再び、いや、絶え間なくナイフを投げる。
全てのナイフを投げつけると、今度は飛行するナイフを繰る。
縦横無尽。あらゆる方向に飛び交い、あらゆる方向から襲い掛かるナイフを、紙一重、またはそれ以下の距離で避け続ける。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇぇぇぇぇぇえええぇぇ!」
息の続く限り叫ぶ。
飛び交うナイフの一本一本に、自分の念をこめつづける。
それでも、目の前の少女はそれらを避けつづける。
「・・・っ! 死ねっ・・・つってんだよおぉおぉぉおおおぉぉおおお!」
女の子の絶叫。
そして――
ナイフの飛来が止んだ。
だが、ナイフは空中に静止したままだ。一定の法則に従って。
「・・・・・・!」
周りを見渡す。
どこを見渡しても、視界にナイフが映る。
空中に静止したナイフは、アリアを取り囲んでいた。もちろん、全方位。ドーム状になって、アリアの周りに浮いている。
「さっきからチョコマカチョコマカ・・・さっさと死んどけっつーの」
確実。確実に勝利は目の前にあった。だが、それでも女の子の顔から不快感は消えない。目の前でナイフに囲まれている少女が、呆れた顔を自分に向けていたからだ。
「全く・・・喋ることみんなガキなんだから。それに、こんなの最初っから気付けっつの」
「ガキって、言うなああぁぁぁああぁあぁぁぁあああぁぁぁあああああああ!」
念を込める。
ありったけの念を込める。
とたんに、静止していたナイフが、アリアめがけて飛んでいく。
そのナイフで出来たドームのなかで、アリアは目を閉じ、深く息を吸う。
もうわずか、もうわずかで、ナイフがアリアの肉を穿つ。
その瞬簡、アリアは腰を落とし、吸い込んだ息を一気に吐く。
「っっっっっつあぁっ!」
空気が、震える。
衝撃に似た感覚が、全身を貫いていく。
「うぁ・・・」
気が付けば、地面にへたり込んでいた。
だが、それ以上に驚愕すべきことは、ナイフに囲まれていた少女が立っていることである。
あれほどのナイフを、少女は――アリアは気合一つで避けきった。
否、全てのナイフを打ち落とした。
原理は大したことではない。
女の子がナイフに込めた念を、自分の念で打ち消しただけだ。
その、地面に落ちたそのナイフの一本を、アリアは広い上げる。―― 一歩、女の子に近づく。
「ひっっ!」
引きつった声をあげ、女の子は後ずさりしようとする。だが、身体が動かない。ただ震えるばかりで、全く動こうとしない。
アリアが近づいてくるたびに、震えは大きさを増し、鼓動も早くなる。歯の根が合わず、カチカチと音を立てる。
自分の陥った状況を飲み込めない。こんな感覚は知らない。
だが、実際は知らないわけではなかった。ただ忘れているだけだ。過去にもこれほどの、これ以上の感覚を味わったことがある。
恐怖――
長く、忘れていた感情が、女の子を包む。
「・・・うごけ・・・」
小さく呟く。
少女が一歩、近づいてくる。
「・・・動け・・・」
小さく呟く。
少女が一歩、近づいてくる。
「動け、動け、動け」
泣きそうな声で、自分に念をかける。
少女の歩みは止まることなく、一歩づつ近づいてくる。
「動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け」
涙を流し、狂ったように念をかける。
少女は目の前。その手にはナイフ。ナイフが空に弧を描き、白刃が再び弧を描く。
「動けぇええぇぇえええぇぇぇぇえぇえ!」
女の子は狂乱した如く叫び、白刃の煌きを見た。
刃は、目の前で止まった。
「はっ、はぁっ、はぁっ・・・はっ・・・」
短く、連続で息を吐く。
「消えろ」
アリアは呟いた。
「今すぐ、あたしの視界から消えろ。二度と、あたし達に近寄るな」
威圧の篭った声。
女の子は、ただ頷く。
「ひっ、ひっ・・・ひぃっ」
アリアに殺意が無いと知ったためか、女の子の緊張は解けた。
「あっ・・・あっ、あっ、あぁ・・・」
自分の下半身を押さえる。
それでも、一度始まった生理作用は押さえることが出来ず、衣服に、地面に染みを作る。
少女の顔を、見上げる。
アリアは冷徹な瞳を向けたまま、ナイフを遠ざけることも無く、ただ女の子を見ていた。
「消えろ」
ナイフを握りなおす。
「ぅあっ・・・ああぁ・・・あぁっ」
女の子は身体を持ち上げると、一目散に逃げだす。
女の子の姿が見えなくなってから、アリアはその手に持っていたナイフを投げ捨てた。
細く、暗い路地に、女の子の泣き声が木霊する。
「畜生っ、畜生っ・・・」
涙を流し、服の裾を握り締め、侮蔑を吐き捨てながら、女の子は路地を歩いていく。
屈辱。
耐えがたい屈辱。
あれほどの辱めを受けたのは生まれて初めてだった。
「畜生っ! 畜生っ!」
その辺に転がっているゴミを蹴り上げる。
「楽勝だったんじゃないのか? クィティス」
不意に、自分に掛けられた声に反応する。
視線の先には、一人の男が立っていた。黒いコートに身を包んだ男。
「このザマはなんだ?」
男の台詞に、クィティスは歯軋りをする。
「予想以上だった! それだけよ!」
狂ったように頭を振り回し、男に向かって叫ぶ。
「笑えば? 笑えばいいじゃない! こんなザマで! 人前で漏らしてまで生きてる私を見て笑えばいいじゃない!」
涙を流して、叫ぶ。
「負けた要因はなんだと思う?」
男の問いに、クィティスは狂った笑いを浮かべて応える。
「驕り! そう言いたいんでしょ! そうよ! 私は驕ってたわよ! 大したこと無いってねぇ! それで? 殺すの? 殺しに来たの? それとも何? 私を売る? あははははは! そうよね! 私みたいなのが売り物になる市場もあるからね!」
男は無言のまま、クィティスの目の前に立つ。そして、そっと抱き寄せる。
だが、優しい抱擁ではない。幼い身体を、力任せにギリギリと締め上げる。
「・・・はっ、ぁっ・・・くぁっ・・・」
激痛にうめく。
骨が軋み、肺から空気が漏れていく。
呼吸すら、ままならない。
男は、クィティスの耳元で囁く。
「次だ。それを最後にするか、最期にするかはお前次第だ。もし、失敗したならば・・・『生きる』という地獄を教えてやる。」
抱きしめられたまま、クィティスは目を見開き、恐怖と激痛に耐えていた。
After noise open a noise
騒がしい店内で、アリアはウェイトレスの制服に身を包んでいた。
「あー・・・ウルサイ・・・」
スラム街にあるとは思えないほど、店内は騒がしかった。
というか、あれほどの事が起きた後にも関わらず、店は時間どおりに開店した。
コールマンも何故かカウンターに居座ってるし。
「・・・なんで立ってられるのさ・・・」
それどころか、客の注文を受けて料理まで作ってる始末だ。どう考えても、不死身としか思えない。
「おぅ、アリアちゃん。ウィスキーもう一本頼むわ」
「あーはいはい」
適当に注文を取ってコールマンの下へ向かう。
「ウィスキー一本」
その投げやりな態度を見て、コールマンは軽く説教をする。
「もっと真面目にやれ。夜羽音を見てみろ」
視線をコールマンから夜羽音に移す。
「はーい、ビールお待たせぇー。それから鶏の照り焼きねー」
とても楽しげに、むしろ嬉しそうにウェイトレスの仕事に励んでいた。
「あんくらい真面目にやるんだったら、仕事の件も考えてやる」
「ぐっ・・・うぅ・・・・・・わーったよ。わっかりましたよ! やります」
そういって、喧騒の中へと舞い戻っていく。
――こうして、スラムの一日も暮れていく――
あとがき
どうもこんにちは。または初めまして。
今回こうして小説を公開いたしましたが、自分の書いた小説を多数の方が閲覧できる状況に置く。
というのは初めてでして・・・なにかと物言いたい事があるかと思いますが、それは次回以降に期待・・・という形でお願いします(笑
さて、この物語ですが。本来は同人誌として発行する予定のものでしたが、画力の問題等によりwebでの配信となりました。
それでもこうして日の目を浴びさせることが出来てとても幸せだと思います。
おおよそ分かってらっしゃると思いますが、この物語はまだ終わっていません。
結構長い話になると思われます。
元来、私は物語の始まりと終わりを最初に考える性質です。
なので、もちろんこの物語の結末も頭にあるわけですが・・・どうやったらそんな結末に繋がるのかが分かりません(泣
それでも完結するまで書きつづけるつもりですので、宜しくお願いいたします。
それから、タイトル・各節目でヘタレな英語使ってますが・・・あんまり突っ込まない方向でお願いします(笑
英語、苦手なんですよ(苦笑
なので英語は多めに見てください・・・今後も。
で、一応タイトルの読みとか意味を述べたいと思います。
述べさせてください(笑
- Sterdust Hearts
タイトル。スターダスト・ハーツと読みます。
直訳すると星屑の心。ネーミングセンスの無さが伺えます。
- Open one story of little world in the big city.
オープン・ワン・ストーリー・オブ・リトル・ワールド・イン・ザ・ビッグ・シティ。
この小さな世界にある大きな街から物語は始まる。かなり私的解釈。
- She looks up sky, Very mad sky.
シー・ルックス・アップ・スカイ・ヴェリー・マッド・スカイ。
彼女は薄汚い空を見上げる。もう、英語の文法なんて無視の方向です。
- She looks down her heart, Very little heart.
シー・ルックス・ダウン・ハー・ハート・ヴェリー・リトル・ハート。
彼女は小さな自分の心を見つめる。一つ上のパクリ。流れ的に、見上げたなら見下ろせ!みたいな(笑
- She remenber sin of crimson.
シー・リメンバー・シン・オブ・クリムソン。
彼女は紅き咎(とが)を思い出す。咎ってのは罪ってことです。アリアの咎については後の話でより詳しく・・・
- She spit on the fuckin' bastards.
シー・スピット・オン・ザ・ファッキン・バスターズ。
クソッたれなヤツラに唾を吐きつける。アメリカンテイストをかもし出してみました(笑
- After noise open a noise.
アフター・ノイズ・オープン・ア・ノイズ。
騒ぎの後には騒ぎが始まる。つまるところ、騒ぎは収まらない、と。
さて、我ながら可哀想なレベルの英単語です。
だれか教えて下さい。英語。
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